界面活性剤と環境のこと

 


合成界面活性剤についてしばしば取り上げられるのが魚毒性や生分解性についてです。
生分解性とは、物質が微生物によって分解される性質を指します。
 
 

環境中に放出されることになる界面活性剤は、環境や生態系に負担をかけないよう、一秒でも早くその作用を失わなければいけません。
また、有機物である界面活性剤は水質汚濁の原因ともなるため無機物の状態まで分解しなければなりませんが、その分解は環境中の微生物が担うため、その微生物たちが分解可能な分子構造でなければいけないのです。
 
 

合成界面活性剤の生分解性については、過去の工場排水や家庭排水による水質汚濁の経緯もあって盛んに論じられてきました。特に重要視されているのは、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)、使用量の多いAE(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)、それからAES(ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩)です。





合成界面活性剤,生分解性



例えば、界面活性作用を失った目安とされる一次分解については、MBASを使った測定方法、またはCTASを使った測定方法(ポリオキシエチレン系界面活性剤に使用される)によって判断されます。
 
 

このとき、LAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩)の一次分解が他の界面活性剤と比較して遅いのを「若干遅い程度」とするのか「とても遅い」とするのかは、判断する人と場合によります。
他の合成界面活性剤に対しても、3〜5日で界面活性作用を失うというこの結果が「環境に負担がない」とするか「この間にも浄水場の微生物を始め、水生生物に影響を与え続ける」とするのか、これも同様です。
 
 





また、究極分解とは、実際に物質そのものがすべて水や二酸化炭素という無機物に変化し、完全に環境中で分解されてしまうことを指しています。
これについては、BOD(生物化学的酸素要求量)という数値を用いて判断されます。
BODは、水中に存在する有機物を微生物が生分解する時に消費する水中の溶存酸素量をいい、一般的には水の汚染の指標として用いられるものです。
 
 

ただし、BODについて注意しなければならない点がいくつかあります。
まず、分解可能な物質、つまり微生物がその有機物を食物として利用できることをいうことがまず大前提です。
また、有機物の中でも代謝の難易があり、測定されやすさに違いも生じます。糖類、有機酸はほぼ全量が測定されますが、低分子化したあとに代謝される高分子の物質(デンプン、タンパク質、脂質など)は、その低分子化の過程の分の時間を必要とするのです。
 


 
また、微生物によって分解されにくい有機物や、微生物に影響のある物質を伴う場合は測定ができません
生分解性の低い工業化学物質、農薬や細胞毒性のある有害化学物質は、BOD としてほとんど測定されないか負の誤差を生じさせます。(こういった物質は、下水処理施設の処理効率を極端に悪くしてしまいます。)
逆に、アンモニアや亜硝酸などは、無機物ですが微生物によって酸化されるので、測定値に含まれてくる場合があります。




生活排水,汚濁有機物,BOD




上図は、生活排水の汚濁有機物をBODで分類したものです。
台所の排水中にはBODの高いものが含まれがちです。
 

  ・油 15,000,000mg/L
  ・おでんの汁 100,000mg/L
  ・牛乳 78,000mg/L
  ・ビール 81,000mg/L
  ・お味噌汁 37,000mg/L

   

 
本当に環境のことを考えるなら、排水の汚れを減らすことを考えることが大切だと思うのです。
油はきれいに拭き取ってから燃えるゴミとして処理したり、食器の汚れを古紙などで拭き取ってから洗ったり、排水のゴミ受けに水切り袋を取り付けたり、できる小さな工夫はたくさんたくさんあります。→I Love The Earth
 

 
界面活性剤については、それ自体が有機物であることを意識し、使用量を少しでも減らす工夫が必要です。べっとり付いた油汚れをたっぷりの洗剤で洗い流せば目の前はきれいになりますが、油も界面活性剤も消えてなくなるわけではなく、有機物の汚れとして流れていくに過ぎません。
 
 

合成界面活性剤が含まれている製品には、ほかにも様々な成分が入っていることがほとんどですので、その成分も考慮しなくてはいけません。中には環境に対して毒性の強いものや生分解性の悪いものがあります。




余談ですが、介護の分野で問題となっている大人用使い捨ておむつの処理に関し、水洗トイレに粉砕して流すという技術が実用化の方向にあるとのニュースを目にすることがあります。
流してしまえば、目の前にあるものは消えますし、ごみの収集日まで保存するという不衛生な状況も防ぐことができます。



ただ、それらの最終処分は下水処理施設になることでしょう。吸水ポリマーとして使われるポリアクリル酸などの物質は、生分解性が低いものです。下水処理施設でどのように処理または回収するのか、もちろん考えられた上でのことだと思うのですが、「排水として流せば終わり」という安易なイメージがついてしまうのはとても危ういことです。



 

 

界面活性剤のライフサイクルアセスメント

 


界面活性剤を環境という視点から考える場合、地球レベルの環境負荷を見積もるLCA(ライフサイクルアセスメント)という手法があります。これは、原料から製造・流通・廃棄に至るライフサイクル中の二酸化炭素消費量やエネルギー消費量を見積もる手法で、現在さまざまな分野で取り組まれているものです。




  【界面活性剤の製造に要するエネルギー比  (GJ/1,000kg)】
界面活性剤,ライフサイクルアセスメント



界面活性剤のLCA分析の事例がこちらです。
生産時のプロセスエネルギー、輸送にかかるエネルギー、原料生産にかかるエネルギー(EMR: Energy of Material Resources)の3点からまとめられています。
 
 
これによると、石けんが一番エネルギー消費量が低く、エチレンオキサイドを付加するタイプの AE や AES などの界面活性剤のエネルギー消費量が大きくなっています。
これを洗濯1回当たりに換算すると、その使用量と濃度の関係から、合成洗剤の方が石けんよりも消費エネルギーは少なくなり、界面活性剤の組み合わせの種類によっては4倍以上の開きが生じる試算となるのです。



ただし、合成洗剤では界面活性剤以外の成分についても併せて考慮しなければいけませんし、石けん製造に関する消費エネルギーは巨大工場での省エネ型生産工程が基本になって算出されたものであることをも考慮しなければいけません。

 







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