香料とイソシアネート

 

香りカプセル、マイクロカプセル…これは、誰もが聞いたことがある言葉だと思います。
柔軟剤や芳香剤などで、香り成分を包み込むために使われている技術です。
香り成分を衣服にしっかり残したり、香りを持続させる目的で使われます。
 
 
そのマイクロカプセルに使われているといわれる物質のひとつが「イソシアネート」です。
 
 
 

 

1、マイクロカプセルとは?

 

マイクロカプセルは、その名の通り「小さなカプセル」です。
微小な粒子や液滴をコーティングし、様々な機能を持つよう加工されています。




香りカプセル、富士フィルム



 
「芯物質」と呼ばれる“中身”として代表的なものは香料・染料・薬品です。食品分野で香料を内包するために使用されることが最も一般的です。インスタントラーメンの粉末スープやチューインガム、清涼飲料などにも使われています。
 
 
それを内包する「壁材」と呼ばれるカプセルは、エチルセルロース・ポリビニルアルコール・ゼラチンなどのほか、メラミン樹脂・ホルムアルデヒド樹脂・ポリイソシアネートモノマー・ウレタン樹脂などの樹脂類によって作られています。
 
 
しかし、マイクロカプセル技術が広がる一方で、地球環境レベルで汚染が進んでいることが明らかになってきたマイクロプラスチックとの関連についても強く疑われるようになってきました。
 

 
 
 

 

2、イソシアネートとは?

 

 
 図:イソシアネート基を持ったままの分子の成長
イソシアネート基 成長
 


(−N=C=O) という部分構造を持つ系列物質をイソシアネートといい、多様な種類があります。ポリウレタンのモノマー(単分子)であり、重合して多様なポリウレタン樹脂となります。上の図のように、イソシアネート基を持ったまま分子が成長していき、非常に反応性に富んでいるのが特徴です。
 
 
イソシアネート製品は、生活の場で活性なイソシアネートのモノマーやプレポリマーのまま使用され、現場で重合反応させるものです。
建築や土木の材料として、イソシアネートを重合させポリウレタンを作る作業は現場で行われますし、水性ポリウレタン塗料も同様の反応です。
 
 
お洗濯においては、香り成分を繊維にしっかり定着させるためのイソシアネートは、当然活性の高いモノマーやプレポリマーなどの形状である必要があり、つまりその危険性は高いと考えられます。
 
 
こういったイソシアネートを含む製品は、下の表からも、接着剤・変性アスファルト・変性コンクリート・シール材…身の周りにさまざまあることがわかります




イソシアネート、含む製品



 

 

3、イソシアネートの性質は?

 

イソシアネートは半揮発性です。例えばポリウレタン廃棄物の処理時に100〜200℃に加温すると、イソシアネートのガスが発生します。
温度が上昇しなくても切断や粉砕など、新しい表面や摩擦が生じる機械的作業では、静電気やマイクロプラズマによってポリウレタンが分解し、イソシアネートを発生させます
 
 
また、各種作業によって粉塵となったポリウレタンは、大気中で紫外線や他の大気汚染物質の影響を受けて、イソシアネートに解重合しながら拡散していきます。
ポリウレタン繊維の衣服からは、摩擦によりイソシアネートが発生する可能性もあり、実際に皮膚の発赤や気分の悪さの訴えがあったといいます。
 
 
1980年代後半から、イソシアネートが工場内ばかりでなく身近な環境でさまざまな用途の製品として使われるようになりました。
日本ではイソシアネートの応用技術発展に対する研究は盛んですが、健康影響に関する研究は、その汚染が工場内に限られていたその当時のものしかありません。
 
 
反対に諸外国では研究が著しく進み、健康影響メカニズムの詳細も明らかになっています。

 


 

 

4、イソシアネートの有害性は?

 

経口摂取の場合は、消化器内でアミンや尿素に変化し、排出されやすいので害は少ないと考えられています。


また、吸入した場合には、肺胞から血液中に入り、血清アルブミンやヘモグロビンと結びついて抱合体となり、全身の臓器に行き渡ることになります。その半減期は人によって異なり、1〜21日とされています。
イソシアネート抱合体は、鼻腔の嗅覚器・気管支・肺といった呼吸器と、腎臓、心臓に多く蓄積します。
 
 
そして、皮膚から吸収されると、イソシアネート抱合体として全身を回り、喘息を引き起こす場合もあります。粘膜や皮膚と反応し刺激することで、目や皮膚の症状も起こします。
カナダでは、2010年にトルエンジイソシアネートが発がん性があり呼吸器に影響を与えるとして毒物リストに載せられました。
 


 
イソシアネートは極微量でも感作し、発症率が高いのが特徴です。
作業環境での許容濃度を見てみると、その毒性は、ホルムアルデヒドの20倍、トルエンの40,000倍にもなります。


  ・トルエンジイソシアネート 0.005ppm
  ・ホルムアルデヒド 0.100ppm
  ・トルエン 200.000ppm

   

 
イソシアネートによる症状は下の表の通りです。
化学物質過敏症の症状と非常に酷似しています。



イソシアネートによる症状 


環境に広がるイソシアネートの有害性 ここからまとめています。








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